今年の3月に卒業した男子生徒が在学中にリクエストし、入荷後何度も借りて読んでいた本です。

 はっきり言って学校図書館に入れるか入れないかという眼で見ると、タイトルでかなり損をしている本だと思います(苦笑)。中身を読まないで判断しようとしている国語の先生だと、おそらく速攻で却下するのではないか。


虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
(2010/02/10)
伊藤 計劃

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 では別のタイトルであったとして、ふつうの中学校の司書さんが入れるかどうかといえば、これまたやっぱり入れないでしょうね。むしろ対象年齢は、中学生の読解力の水準が決して高くない現状を鑑みれば、高校生以上かもしれない。

 しかしながら、それでも必死で食らいついて読み切ろうという中学生にとって、この物語は相当なトラウマを残す作品になるでしょう。戦争ルポやフィクションをある程度読んで準拠枠を作ってしまっている大人が読むのと違って。

 間違いなく傑作です。……とんでもない誤読さえしなければ。
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2011.08.27 Sat l 書評 l COM(0) TB(0) l top ▲
 下に載せているのは文庫版の表紙ですが、職場のために購入したのは単行本版のほうです。


アイの物語 (角川文庫)アイの物語 (角川文庫)
(2009/03/25)
山本 弘

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 ちなみに単行本版の表紙はこちら。

アイの物語(単行本版)

 「アイの物語」を読了した上で、唐突に平井和正の「メガロポリスの虎」を思い出した。

 マシンと人間との関係……特に結末にいたって示される関係は、両作品とも相似形を表しているように感じたのだ。時代の制約から、「メガロポリスの虎」のそれは人間の都市と自動生産機構の集中管理を担ういわば「マザーコンピュータ」が持つ、人間くさい母親・女神的属性として現れるけれども。

 そしてまた、結末までたどり着けば、それは故・小松左京の「虚無回廊」(未完)のAEを思わせる未来が待っている。絵になる壮大なイメージだ。

 ふだんローティーンの子たちと接していて思うことだが、本来SFの読者であるべき子供たちは、逆に人間としての日常感覚に捕らわれすぎていて、こうした細部と土台をしっかり固めた上で人間の想像力を飛翔させる物語はとっつきにくいかもしれないな、と思った。

 私自身はとても面白かったし、読解力があって思考の柔軟な中高生には、ぜひ読ませたい作品です。
2011.08.15 Mon l 書評 l COM(0) TB(0) l top ▲
「レインツリーの国」(有川浩著)の関係でぜひ入れたいと思っていたこの本を入れたのは一昨年のことですが、読了した卒業生(当時2年生)からは「面白かった!」と言われていたので、夏休みを機会に読んでみました。

詩羽のいる街詩羽のいる街
(2008/09/25)
山本 弘

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 ……傑作ですよ、読め! だけでは伝わらないと思うので、ネタバレにならない範囲で紹介を。

 「ペイ・フォワード」という映画がありましたが、あれは善意と親切を「次の人に渡していく」物語でした。
 この小説は、親切と善意、モノや行為をトレードすることを仲立ちしていくことで人と人をつなぐ女性の物語です。4つのエピソードからなり、それぞれのストーリイと語り手は独立しているものの、順番に読んでいくと、前のエピソードの伏線がゆっくりと回収されていきます。

 ええいもう歯がゆいなあ。やっぱり読んで下さい。
2011.08.07 Sun l 書評 l COM(2) TB(0) l top ▲
 第57回読書感想文コンクールの課題図書が届きました。

2011課題図書

 おたよりで紹介しなくてはいけないという大義名分のもとに(笑)、こちらをさっそく読んでみました。

夢をつなぐ  山崎直子の四〇八八日夢をつなぐ 山崎直子の四〇八八日
(2010/07/31)
山崎 直子

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 本当を言うと、もっと書き込んでいくとかなり濃密な記録になるんだろうなあ、というのが第一印象でした。

 宇宙飛行士とその関係者が書いた本といえば、うちの図書館にあるのは、向井千秋さんの夫の万起男さんが書かれた「君について行こう」、立花隆さんの「宇宙からの帰還」、立花さんが日本人で最初に宇宙へ行った元TBS記者の秋山豊寛さんに行った詳細なインタビュー記録「宇宙よ」など。

 読み比べてみると、山崎さんがさりげなく簡単に書いている体験の細部が想像できて、逆に感想文が書きやすくなるかもしれない、ということを感じました。

 宇宙開発に興味がある子なら、これをとっかかりに同じテーマのほかの本にも進んでみたら面白いんですけども。
2011.05.18 Wed l 書評 l COM(0) TB(0) l top ▲